注） このＳＳを読んだ人の中には、これをＤ＞Ａ予想ＳＳかと思う人が、
ひょっとしたら、一人ぐらいいるかもしれませんが、違います。

発売後、いかに外れているかを楽しむ、アンチ予想ＳＳです。
















『通り魔に注意してください』


その張り紙の前で、かれんの足が止まった。


「これで７件目ね……」


そう言いながら、かれんは顔をしかめた。
かりんは、そんなかれんの表情が、辛かった。



１１時を過ぎた夜の道を、二人は並んで歩いていた。





「かれん、ごめん」



かりんが力無く、呟く。



「あっ、そうじゃないのよ。別にかりんが悪いわけじゃ……」




かれんは、慌ててそう言ったが、かりんの表情は暗い。
この事件に誰よりも心を痛めていたのは、かりんだった。
なぜなら、一連の通り魔事件の犯人はかりんの『同類』であり、その事はかりん
自身が良く知っていたからだ。



「私にもっと力があれば、こんな事には成らなかった」

かりんは自嘲気味にささやく。


「そんな事無い！」


かれんは叫んだ。


「かりんが悪いわけじゃない！ 力が無いのはかりんだけじゃない！

私だって同じよ」



かれんの真剣な言い方が、かりんには少し嬉しかった。




「……ありがとう」



そう答えられて、かれんは少し落ち着いたようだ。
少し恥かしそうな顔をして、


「分かれば良いのよ」



と、早口で話した。






そして、しばらく二人は無言で歩いていた。
夜の街は、既に人通りが絶えている。
時折、深夜営業のコンビニを見かける以外、人の気配が全く
感じられない。だが、この街のどこかで今も通り魔は息を潜めているのだ。



７人もの人間を、殺害した通り魔は今の所、その姿さえ分かってはいない。
ただ、まるで爪や牙で襲われたかのような傷だけが、被害者の体に残されて
いた。

当初は、何らかの動物が人を襲っているのではないかとも、言われて
いた。だが、被害者の傷からみると、その動物は人間ほどの大きさでなけれ
ば、説明が付かない。そんな大きな生物が逃げ回っているとは考えにくいと
いう事で、やはり人間の手による犯行という見解が新聞などで報じられていた。








「早く三人目を見つけましょうよ。
そうすれば私達も少しはマシになると思う」


かれんがそう言った時、遠くから悲鳴のような声が聞こえた。

二人は顔を見合わせると、悲鳴が聞こえた方へ走り出した。





















二人が駆けつけた場所は、最近夜逃げして人が寄りつかなくなっている、
スーパーマーケットの駐車場だった。アスファルトの地面に倒れている女性
に息はない。


「遅かった！」


かれんが歯噛みする。



だが、かりんの興味は既に死体とは別の所に移っていた。
その視線は、一人の少女を捕らえていた。


少女の両手と口元は真っ赤に染まっている。
奇妙な事に、その頭に、髪の毛の間から犬や猫のような耳が生えていた。



「お前だったか……」


かりんの声が、冷たく響いた。
それに気付いたかれんも、少女を見つける。



「どういう奴よ？」



「そいつの名前は、リ・サという」

かれんの問い掛けに答えたのは、かりんではなかった。
何時の間にか、二人の後ろに別の少女が現れていた。


「吹雪先輩？」


振り向いたかりんに、


「お前に先輩呼ばわりされる筋合いはない！ 裏切り者が！」



その言葉に、かりんの心が痛んだ。
かりんが生まれた世界、幻想界はこの世界への潜入と支配を進めていた。
その悪事に耐えられなくなった時、かりんは生まれ故郷を裏切っていた。
しかし、かつての友人達と闘い倒してきたかりんに対する吹雪の言葉は、
ある意味、事実である。



「丁度良い機会だ。 リ・サ！ そいつらを始末しろ！」




「了解なのです！」



答えた瞬間、リ・サは二人に襲い掛かっていた。
かれんは、難なくかわしたが、動揺していたかりんは避けるのが遅れる。




「くっ！」



間一髪、直撃は免れたが、リ・サの爪がかすった右の脇腹から、血がにじ
んでいた。



「かりん！」


「大丈夫、大した事無い」




そう答えながら、かりんは地を蹴った。
空中で、何度も回転しながら、かれんの横に着地する。


二人は、リ・サを挟んで吹雪と向かい合う形になった。
吹雪は手を出さないつもりか、腕を組んだままこっちを睨み付けている。
そして、リ・サが再び襲い掛かる。


それを見たかれんは、

「いくわよ！」


かりんも

「よし」





二人は大掛かりなポーズを取る。


そして、

「騎士覚醒！」

叫び声が二つ響く。



次の瞬間、二人の体が閃光に包まれた。
その光にリ・サがたじろぎ、動きが止まる。


数秒後、光が消えた跡にさっきまでとまるで姿の違う、二人が立っていた。


全身タイツに所々白や黒のラインがデザインされ、目の辺りには黒いゴーグ
ルのような物がある。腰には細いベルトを巻き、バックルにはチェスのナイト
を模したようなレリーフが施されている。


もっとシンプルかつ、簡潔に分かりやすく言うならば、戦隊物のヒーロー
そのまんまな格好。ちなみにかれんが赤で、かりんが青である。このカラー
は二人の瞳の色から来ている。別にこの物語において、重要ではないが、伏線
ではあるので覚えておくと良いだろう。


「赤い瞳は 炎の証し！
赤騎士 かれんレッド！！ （ば〜〜〜ん）」



かれん、いやかれんレッドがポーズと共に名乗りをあげる。


「青い瞳は 空への誓い！
青騎士 かりんブルー！！ （ば〜〜〜ん）」


かりん、いやかりんブルーが（以下略）



「騎士道戦隊 ナイトレンジャー！！！（ばばばば〜〜〜ん）」



二人が同時に叫んだ。
もう、お気づきだろうがさっきの（ば〜〜〜ん）は、二人の後ろで爆発が
起った時の音である！

なぜ、爆発するのか？などとツマラナイ事を考えてはいけないっ！！

ちなみに（ばばばば〜〜〜ん）は、タイミングをずらして三つ同時に爆発が
起きている。

ああ、何と美しい光景であろうか！？これぞまさに日本人の心！！
わびとさびの世界である！！

本来ならここで、戦隊物の歴史とその素晴らしさをみっちりと説きたい所
では有るが、これは（一応）ＭｉｓｓｉｎｇＢｌｕｅその他のＳＳである。
残念ながら、割愛させて頂こう。






「多くの人の命を奪った、モモンガクリープ リ・サ！！
私は絶対許さない！」

かれんレッドがびしっ！っとリ・サを指差した。

「その報い 受けてもらう！」


これは、かりんブルーである。






「ええい、例え変身したとしても、私が負けるわけないのです！」


そう言いながら、二人に飛び掛かるリ・サだが……




「騎士道パァンチ！」


「騎士道キィック！！」


「騎士道逆エビ固めぇっ！！」


「騎士道パワーボォォム！！！」


「騎士道 ジャァイアント スイィィィングゥッ！！！！」



「騎士道（以下略）」



と、まぁ、このような目にあった。


霞三連はどうした？、と思われる方も多いであろう。
ナイトレンジャーが３人揃った時、巨大合体ロボット「騎道神」が使用可能
になる。 この物語では、このロボットの必殺技が霞三連なのだ！だが、先ほど
かれんが言ったように、未だ３人目のナイトレンジャーは見つかっていない。

そのため、この物語では騎道神も、霞三連も、出番が無いのである。




話を戻そう。
すでに、リ・サはボロボロである。



「かりん、騎士道ボール！」





「分かった」


かれんレッドに答えて、かりんブルーは手に持ったラグビーボール上の物体
を地面にセットした。

これぞ、ナイトレンジャーの必殺技、騎士道ボールである。

このボールは超高性能爆弾であり、ブルーがセットし、レッドが相手に蹴り
飛ばす。


相手にぶつかった衝撃で、爆発を起こし、敵を細胞レベルまで焼き尽くすのだ。


なお、蹴った衝撃で爆発しないか、町中で爆弾なんか使うな、そもそも
どこからそのボールを出した、等の苦情は心の汚れた大人の考え方であり、
受け付けないのでそのつもりでいて欲しい。


だが、その時今まで動かなかった吹雪が動いた。


「これでもくらえ！！」


叫びながら一気に冷気が放出される。



「何！？」



「くっ！」




二人が声を挙げた時には、二人の体は凍り付いていた。騎士道ボールを
今にも蹴りそうなポーズで、動きが止まってしまった。

なお、二人に吹雪の知力分のダメージが与えられたとか、そういう事はない。




「今だ！ リ・サ」




「ハイ！ お任せなのです！」



リ・サが再び襲い掛かる。




「くっ………うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」


かれんは雄叫びを上げながら、凍り付いた体を無理矢理 動かす。

そして、今まさに飛び掛からんとしたリ・サめがけて、渾身の力でボールを
蹴り飛ばした。




「なっ！？」


自分からボールに飛び掛かる羽目になった、リ・サは






どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん！！！！！




大爆発を起こして、吹き飛んだ。





「くぅ」



その熱で、かりんとかれんの氷が溶ける。しかし、至近距離での爆発は、二
人にも、少なからぬダメージを与えていた。二人は、何とか立ってはいるが、
いつ倒れてもおかしくはない状態だった。




「……リ・サは失ったがこれでお前達も終わりだな」


吹雪は、二人に向かってゆっくりと歩きはじめた。

二人は何とか、身構えようとするが、それさえままならない。
それを見て、吹雪は悪意に満ちた笑みを浮かべた。



「セイレーンクリープ マリィの痛み、マーメイドクリープシーナの苦しみ、
シルフクリープ雅の怒り、お前達に倍にして返してくれる。」



そういって、吹雪は走り出した。目標は



「まずは裏切り者からだ！
かりんブルー、いやヴァルキリークリープ かりん！」



しかし、かりんブルーにも、かれんレッドにも、もはや吹雪を止めるだけの
力は残っていなかった。





吹雪の拳がかりんに届く、まさにその一瞬前、


「ぐぅっ！？」


突然現れた何者かが、吹雪を突き飛ばした。


「誰だ？」



吹雪と、かれんレッド、かりんブルーの目が、一点に注がれる。


そこに立っていたのは、







「黄金の瞳は 太陽やどし！
黄騎士 愛イエロー！！ （ば〜〜〜ん）」








「三人目の、ナイトレンジャーだと！？」


吹雪の叫びが響く。












遂に、三人の騎士が揃った。
赤、青、黄色、三つの瞳で未来を見据え、
闘え！ 騎士道戦隊！
負けるな！ ナイトレンジャー！！




（続かない）

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