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＜ ６ ＞
‥‥そして、準備室から出てきたかりんを一目見るなり、全員‥‥いや、エリスを覗いた全員が絶句する。
「オオ。 チャント、サイズもピッタリだナ。 ウンウン。 似合うゾ、かりん」
最初にそう言ったのは、どんな格好で出てくるか分かっていた、エリスだった。
「す、スゴイ‥‥お、お師匠さま、スゴクお似合いですよ！！」
「う、うん、ホントに似合ってます‥。 いいなぁ‥私も着てみたいです」
「そうだね‥神瞳さん、とってもキレイ‥」
みんなが感想を言う中、俺は間抜け面でかりんを見つめるコトしか出来なかった。
「まあ、似合うって言っても、あたしホドじゃないけどさ。
にしても、誕生日プレゼントにアレをあげるとはねぇ‥。 功司もヤルじゃない？」
と言う瑠羽奈につつかれて、やっと俺も正気に戻った。 慌ててヒラヒラ飛んでいた、エリスを掴む。
「い、イタイって！ ナニすんだヨ？」
「な、ナニすんだは、俺のセリフだ！！ あれのドコが、ヨロイなんだよ！？」
「ン？ アレもチャントしたヨロイだゾ？ ホラ、頭にはチャント、カブトが乗ってるし」
「あれは、カブトじゃなくて、ボンボンだろう！ 結った髪を入れる！！」
「んで、手には武器である、バトルファンを持っててダナ‥」
「横文字でカッコ良く誤魔化さないで、素直に扇子って言え！ 持ってるのは、せ・ん・す！！」
「ソンデ、体を覆うのは、女性の魅力を最大限に引き出す、究極のヨロイだナ」
「ヨロイじゃない！ あ、あれは‥‥あれは、チャイナドレス以外のナニモノでもないだろ！！？？」
そう‥‥かりんが着てきたのは、チャイナドレスだった。 しかも、中国映画から飛び出したかの様な、完全装備の‥。
「ど、ドコをどう間違えたら、ヨロイを欲しがってる俺に、チャイナドレスを売るんだよ！？」
「ダカラ、アレもヨロイなんだって。
映画とかにもあるダロ？ チャイナドレス着て、戦ってる女性トカ。 あのスリットがあるから、戦いやすいんだろうナ〜」
「かりんちゃんは、映画になんか出ないっての！ あんなの着て、部活が出来るか！！
って言うか、何で、エリスのトコでチャイナドレスなんて売ってるんだよ！？」
「ダカラ、最初に言ったロ？ 発注ミスと発送ミスが重なってってナ」
「幾らなんでも、ミスし過ぎだ！！ あ、あんなのあげちまって‥俺、かりんちゃんに何て言えば良いんだよ！？」
「ソンナの、似合ってるって言ってやりゃ良いダロ？
ホラ。 かりんだって、何か言って欲しくて、待ってるみたいダシ」
そのエリスの言葉に、ハッとしてかりんの方を見る。
いきなりエリスと口論を初めた俺を、少し心配そうな表情で見つめていた。
ま、マズイ‥何か言わないと。 ‥やはりココは、謝るべきか？ 変なものをプレゼントしたコトを。
それとも、エリスの言うように、似合ってるって言うべきなのだろうか？
‥‥ど、どうすれば良いんだよ、俺は！？
頭を抱えて悩んでいると、かりんが少し視線を落として、口を開く。
「‥あの‥似合って‥無い、ですよね？ 申し訳ありません。 ‥折角、この様な高価な物を、贈って頂いたのに‥」
「え！？ そ、そんなコトないぞ！ 似合ってないなんてコトない！！ ってか、殺人的に似合ってる！！
そりゃもう、かりんのタメにあるような服だなって思うくらい！！」
「‥そ、そうですか？ そう言って貰えると嬉しいのですが‥。 それでしたら、先ほどエリスとお話していたのは？」
「あっ、いや‥‥その、色々あるんだけど‥。 ま、まあ、似合う似合わないは関係ないから、気にしなくていいよ。
それより、悪かった。 変な物あげちゃって」
「いいえ！ とんでもありません！ こんな素敵な物を頂いて‥とても嬉しいです！」
と言った後、かりんは真っ赤になって、視線を外す。
「‥で、ですが、その‥。 と、とても嬉しいのですが、これはちょっと恥ずかしいですね‥。
このスリットが少し、スースーするのですが‥」
「‥や、やっぱり、そうなんだ‥？ 見てる方は、そこが良いんだけど‥‥って、いや何と言うのか‥」
俺がそう言うと、更に真っ赤になってしまった。 ‥俺も思わず余計な事を言ってしまって、真っ赤になる。
二人で真っ赤になって、下を向いてると、瑠羽奈が俺の背中を叩いて、口を開く。
「うんうん、キミも自分の欲望に素直になったわね。 こんなエッチなのを、プレゼントにあげるなんてさ」
「ば、ばか、違うって！
こ、これは発注とか発送とかのミスがあったからで‥べ、別に、俺がこーゆーのが好きってワケじゃぁ‥‥」
「そんな、照れないで下さい。 チャイナドレスも、立派なお洋服です。 エッチなんかじゃありませんよぉ？
素敵な趣味です、先輩！」
と、唯芽がフォロー‥と言うか、トドメを刺してくる。
「い、いや、だから、趣味とかじゃなくてな‥？」
「そうですか‥お兄さまは、こーゆーのが趣味だったんだぁ‥。
じゃあ、私の袴姿も、結構趣味だったりするのかなぁ‥？」
「‥うん、チャイナ、巫女、ナースは、人気高いらしいから‥‥静乃ちゃんも頑張って」
「あっ、はい！ これからは頑張って、お兄さまを悩殺しちゃいます！」
と、これは静乃と春日。 そう言って笑い会う。 ‥もう、突っ込む気力も出てこない‥。
「さあさあ、じゃあ宴会始めようよ〜。 ほら、神瞳かりん。 まずは一杯飲みなさい」
と、グラスを差し出す、瑠羽奈。 かりんは、軽く首を振って、口を開く。
「あっ、その前に、制服に着替えたいのですが‥。
このまま食事をしたら、折角の牧村さんのプレゼントが、汚れてしまうかも知れませんので‥」
「そう？ まあ、初日でシミが出来るのも可哀想か。
じゃあ、着替える前に、記念撮影しとこうよ。 誰か、カメラ持ってない？」
瑠羽奈が言うと、静乃が手を挙げる。
「あっ、はい！ 私持ってます。 使い捨てですけど」
「うん、それでいいよ。 ‥じゃあ、まずは、あんた一人で撮って、次に、功司と二人で撮って‥最後にみんなでね」
「え？ あ、あの‥‥こ、この姿を写真に撮られるのは、かなり恥ずかしいのですが‥」
「なに言ってるのよ？ ノリノリで着ちゃってるクセに。 はいはい、いいからソコに立って。 じゃあ撮るよ〜」
「あ、あの、これは牧村さんが見たいと仰ったからで‥。 ‥え、えっと‥‥丹雫さん、聞いてますか？」
‥明らかに、聞いてないな。 かりんの言葉を無視して、パチパチと、何枚か写真を撮る瑠羽奈。
「うん、一人での写真はコレでいいか。 じゃあ次。 功司、隣に立って」
「お、俺？ ‥い、いいよ。 かりんちゃん、嫌がってるし‥」
「大丈夫、大丈夫。 この写真はチャ〜ンと、キミとかりんにも焼き増ししてあげるから。 ホラ、早く」
焼き増し‥‥。 思わず、かりんの方を見る。 俺が見てるのに気付くと、真っ赤になって、手で胸元やらスリットを隠す、かりん。
‥‥か、可愛いな‥。 写真、メチャクチャ欲しい‥‥。 ‥少し考えてから、一つ咳払いをして、口を開いた。
「じ、じゃあ、いい‥かな？ き、記念だからさ。 あ、あはははは‥‥」
「‥は、はい‥‥。 ま、牧村さんが、そう仰られるなら‥‥」
と、恥ずかしそうにしながらも、頷いてくれた。 つつつ‥と、かりんの隣に立つ。
「はいは〜い。 じゃあ、撮るよ〜。 ‥うん。 じゃあ今度は、肩を抱いて」
二、三枚写真を撮ってから、瑠羽奈が言った。 思わず、顔を見合わせる、俺とかりん。
「か、肩って‥‥。 ば、バカ！ んなコト、出来るワケないだろ！？」
「マッタク‥‥エッチなくせに、奥手なんだから。 はいはい。 カメラマンに逆らわないの」
と、つかつかと歩いて来たと思ったら、強引に俺の手を、かりんの肩に置いた。
かりんはチャイナ服なワケで‥‥肩はむき出しなワケで‥‥んでもって、そのむき出しの肩に、手を置いたワケで‥。
‥メチャクチャ顔が赤くなった。 チラリの覗き見た限りでも、かりんも今まででも見たことの無いくらい、真っ赤になっていた。
二人して、硬直する中、写真撮影は順調に進んだ‥。
そして、写真を撮り終わった後。 ‥‥俺はこの手を、向こう一週間は洗わないコトに決めた。
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